歯根膜の働きとは
【歯根膜とは】
食べ物を食べたり、食いしばったりするときは歯に大きな力がかかっています。
私たちは椅子に座る時、寝る時などソファーやベッドが私たちを優しく包んでくれるように、歯も衝撃が吸収されて守られているのを知っていますか?
今日は歯を守るクッション約0.3mmの厚みの歯根膜についてお話します。
歯は土台に直接くっついているわけではありません。歯の土台となる歯槽骨(しそうこつ)という骨の間に、クッション材の役割となっている歯根膜という膜があるのです。その名の通り歯の根っこにある膜で、根っこ全体を覆っています。
【歯ごたえを感じているのはどこなのか?】
歯ごたえを感じているのは歯ではありません。では、どこで歯ごたえを感じているのでしょうか?
歯茎?歯の神経?顎の骨?実はこの中のどれでもありません。
歯ごたえは「歯根膜(しこんまく)」という歯と顎の骨を繋ぐ組織で感じ取っています。
【歯根膜は0.3mm】
歯根膜の厚さは、たったの0.3mmほどしかありません。とても薄い歯根膜ですが、大切な役割があります。
それが「クッション」と「センサー」の役割です。食べ物を噛むとき、歯にはとても強い力がかかっています。歯根膜はその力をクッションのように吸収、分散し、歯や骨を保護してくれています。硬い物をガリッと噛んでしまっても歯や周りの骨が無事なのは歯根膜があってこそなのです。
また歯根膜はセンサーの役割も担っており、噛んだ時の「硬さ」や「感触」といった微妙な刺激は、歯根膜が脳に伝えています。
そのおかげで私たちは歯ごたえを感じられるのです。他にも、食品の硬さに応じて噛む力を調節することにも歯根膜は役立っています。
きゅうりのポリポリした食感やてんぷらのサクッとした食感を楽しめるのも歯根膜があるおかげなのです。
【歯根膜は一度失うと戻らない】
歯根膜は歯が抜けると一緒に取れてしまいます。たとえ入歯やインプラントで抜けた歯を補ったとしても歯根膜が元に戻ることはありません。
つまり一度でも歯根膜を失うとご飯を食べたときの食感も一緒に失われてしまうのです。
【歯根膜の役割】
①衝撃を和らげるクッション
「噛むとき」や「食いしばる時」歯は大きな力を受けます。
歯根膜は、歯が受ける衝撃が歯槽骨(歯の根っこが収まっている骨)や脳にガンガン響かないように、歯の根っこと歯槽骨の間で歯を包みこんで衝撃を和らげてくれているのです。何度も何度も噛み続けることで、歯が擦り減ったり傷ついたりすることからも防いでくれます。
②歯と歯槽骨を繋げる
歯根膜は「歯」と「骨」というまったく違う世界を繋いでいます。膜といってもとても細い糸でできていて、糸の両端は歯と歯槽骨を繋げている歯根膜の細かい糸をシャーピー繊維と言い、歯痕が歯槽骨の歯槽というくぼみからスポスポ抜けないのはこの繊維のおかげなのです。
③食感センサー
暑くなると、つるッとコシのある麺類を食べたくなりますよね。麺類を食べる時に麺の「コシ」に美味しさを感じる方は多いと思います。
食べ物の美味しさを味わうとき、「味」を区別するのは舌にある「味蕾細胞」が味を感知しますが、食感を感じるのに重要な役割を果たしているのがこの歯根膜です。
歯ざわりとか歯ごたえという感覚は、歯の感覚と咀嚼筋(噛むための筋肉)の感覚から成り立っていると言われています。
例えば、麺類が歯に当たったことを歯根膜のセンサーが知覚し、その時の咀嚼筋にかかる力を、筋肉のセンサーで知覚しています。
それらの情報が大脳のコンピューターで総合的に判断させて、麺類のコシが分かると考えられています。噛むときの筋肉の力と歯根膜によって歯ざわり・歯ごたえを感じることができるのです。どんなものが歯に触れられているかどうかが分かるのは歯根膜のセンサーのおかげです。