予防歯科
「歯医者が怖くて定期検診に行っていない」なんて人も多いのではないでしょうか?予防歯科に定期的に通うことで将来自分に残る歯の本数は大きく変わってきます。また、介護に頼らない健康寿命も延ばすことができます。自分の歯を失ってはじめて大切だと気づく人もいます。大切な歯を失うことを防ぐためにも予防歯科について知りましょう。
☆予防歯科について
予防歯科とは患者さんに定期的に来院して頂き、虫歯や歯周病などのお口の中の病気が発症したり、悪化したりしないように検査、治療、生活指導を行うことです。そうすることで普段からお口の中の環境を整えて歯の寿命を長持ちさせることができます。予防歯科では1本でも多くの歯を残すことを目的にしています。自分の歯を多く残すことのメリットはたくさんあります。
~予防歯科の重要性~
予防歯科を行うことで虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。もし虫歯がみつかっても早期発見できるため、悪化する前に治療することができます。若い頃から予防歯科をうけることで、普段から患者さん一人一人のお口の中の状況にあった適切な歯磨きを行うことができ、将来的に歯を失うリスクを大幅に減らすことができます。
「8020運動」をご存じでしょうか?80歳で自分の歯を20本以上残そうとする運動で、厚生労働省や日本歯科医師会が推進しています。ちなみに歯は全部で28本(親知らずを除く)あります。自分の歯が20本残っていれば、美味しく食事することができ全身の健康にもつながります。
海外と比べて日本人は予防意識が低い
日本では痛くなったら歯医者に通うことが大半ですが、欧米諸国では痛みが出る前に予防歯科へ通うことが一般的です。2012年の厚生省国民白書統計によると、予防先進国と言われるスウェーデンでは80歳以上の方のほとんどに20本以上歯が残っています。一方日本では、80歳以上の人で歯が20本以上残っている人の割合は全体の40%程度です。年々増えてはいるものの、スウェーデンと比べると半分程の数値です。
☆予防歯科のメリット
予防歯科には多くのメリットがあります。ここでは予防歯科のメリットを8つ紹介します。
①虫歯や歯周病の早期発見や未然に防げる
虫歯は初期のうちは痛くなく、自分では気づきません。痛くなった虫歯はかなり進行していることが多く、治療しても完治は難しいため、その後の歯のもちは悪くなります。歯周病は痛みを感じることなく進行し、気が付いたら歯がぐらぐらして抜けそう、なんてことも珍しくありません。予防歯科に定期的に通うことで、虫歯で痛い思いをする前に、進行してしまう前に治療をすることができます。また、歯周病の主な原因である歯石を取り除くことで、歯周病が進行しにくい状態を作り、維持することができます。
②健康な歯を長く維持できる
歯は一度失うと二度と元には戻りません。むし歯治療で歯を削ることは歯の寿命を縮めます。いかに歯を削ることなく健康な状態を長く維持することが大事です。歯を失えば失うほど食べられるものが減り、食事の楽しみは半減します。食事の楽しみはQOL(生活の質)において非常に重要な要素であることは言うまでもありません。そのためにも予防歯科で今ある健康な歯を守りましょう。
③見た目の美しさ
予防歯科では仕上げにPMTCを行います。PMTCとは専用の薬品とブラシで歯を徹底的に清掃することです。歯の表面に付着した飲食物の汚れが落ち、歯も明るくつややかになり見た目もきれいになります。
④痛みに苦しむことが少なくなる
早期に虫歯を発見できることで、痛みに苦しむ前に治療を受けることができます。また小さいむし歯は治療時の痛みもほとんどなく、麻酔をしないことが大半です。費用や時間も少なくて済みます。
⑤健康寿命が延びる
超高齢社会となった日本は平均寿命が男女とも80歳を超えています。今後の大きな課題は、介護に頼らず自分で最低限の生活ができる健康寿命を延ばすことです。歯の残存本数が多いほど健康寿命が長くなることが近年の研究で明らかになってきました。
⑥認知症のリスクを減らせる
歯の残存本数が少ない人ほど認知症のリスクが高まることがわかっています。また、残存本数が20本未満で入れ歯などを入れていない高齢者は認知症のリスクが約2倍になるという研究結果もあります。
⑦全身の病気を予防
虫歯や歯周病は口の中だけでなく全身の病気の発症や進行にも影響を与えます。歯周病菌の毒素により動脈硬化が引き起こされ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めます。さらに、歯周病と糖尿病とは相互に悪影響を及ぼすことがわかっています。
⑧経済的な負担が軽くなる
予防歯科の定期検診は、費用の負担はあるものの、年に数回ほどです。虫歯や歯周病になると、治るまでに何度も通院しなければいけません。虫歯や歯周病は定期検診より費用と負担がかかります。また、予防歯科を行うことで、歯科だけでなく全身の病気を予防することにつながり。将来的な医療費の負担も大幅に軽くなります。
【予防歯科の内容】
・スケーリング…歯石を除去することです。超音波スケーラーという振動を利用して歯石を分解し、除去する器具を使用します。
・PMTC…プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略です。専用の器具や薬品を用いて歯の清掃を行うことです。プロが機械を使って、普段の歯磨きでは落としきれない汚れを徹底的に除去します。汚れを落とした後には歯を滑らかに磨きあげることで着色汚れや歯垢の再付着を防ぎ、予防効果を発揮します。
・フッ素塗布…歯の構造を強くしたり、初期の虫歯を修復したり虫歯菌の力を弱めたり作用があり、虫歯予防に大きな効果が期待できます。
メインテナンス
上記の処置を定期的に行います。来院する頻度は月に1回から半年に1回程度で、患者さん一人一人のお口の状態にあわせて決められます。
☆予防歯科の第一歩
習慣は人から指摘されて気づくものも多いです。特に歯ぎしりは、家族や歯科医に指摘されるまで気づきません。ここでは3つの改善すべき習慣について説明します。
①ダラダラ食べをしない
ダラダラ食べは虫歯の原因になります。飲食物に含まれる糖分を栄養にして、虫歯菌は歯の表面を溶かし始めます。テレビなどを見ながらダラダラ食べ続けることで、たとえ少量でもお口の中は常に糖分が含まれることになり、歯は溶け続けてしまいます。これは甘いジュースやスポーツドリンクも同様です。食事やおやつはメリハリをつけて摂取することが大切です。
②食いしばりや歯ぎしりを防ぐ
食いしばりや歯ぎしりは歯にとても大きな負担がかかり、歯に痛みが出たり歯が擦り減ったりと悪影響を及ぼします。食いしばりは意識することで防ぐことができますが、歯ぎしりは自分では防ぐことができません。対策は専用のマウスピースを就寝時に装着するしかありません。
③鼻呼吸を意識する
口呼吸をしていると口の中はずっと乾燥し、細菌が繁殖しやすくなります。そのため、風邪やインフルエンザなどの感染症はもちろん、虫歯や歯周病にもかかりやすくなります。昼間はできるだけ鼻呼吸を意識しましょう。
【お家でできるセルフケア】
①歯磨き
歯ブラシは使い心地がよく、ヘッドの大きさは小さいもの、ブラシの硬さは普通かやわらかいブラシを選びましょう。理想は1日3回毎食後に歯を磨くことですが、それが難しい場合は最低でも1日2回朝と夜に時間をかけましょう。
②デンタルフロス・歯間ブラシ
いくら丁寧に磨いても、歯ブラシのブラッシングだけでは歯垢は60%ほどしか除去できません。特に、歯の隙間にはデンタルフロスや歯間ブラシなどの使用が不可欠です。
【まとめ】
予防歯科とは、口の中の病気が悪化しないように検査と治療を行うことです。歯周病は、認知症、糖尿病、脳梗塞にも関係していると言われています。定期的にメンテナンスを行うことでリスクを減らします。また、80歳以上で自分の歯を20本以上残すと健康寿命を延ばすことにつながるため、予防歯科は大事です。一度予防歯科を受診してみましょう。