根面う蝕
【根面う蝕について】「根面う蝕(こんめんうしょく)」とは、歯の根元にできるむし歯のことです。
不適切なブラッシングや、加齢、歯周病などが原因で歯茎が下がり、歯の根元が露出するとそこに新たなむし歯のリスクが生じます。
根面う蝕は進行が早く、歯を失うリスクも高いので適切なブラッシングやフッ素配合の歯磨き粉などを使って予防しましょう。
【大人ならではのお口の中の変化「歯茎下がり」】
大人になると生じるお口の中の変化に「歯茎下がり(歯肉退縮)」があります。
歯茎下がりは不適切なブラッシングや加齢、歯周病などの因子が複合的に関与して起こります。
30代では役60%、50代以上ではほぼ全ての人に”歯茎下がり”が見られています。
では、歯茎が下がるとどんな問題が起こるのか。
・歯と歯の間に隙間ができるので、歯に物が挟まる
・歯の根元が露出するので、歯がしみる
・露出した歯の根元がむし歯(根面う蝕)になる
といったトラブルが起こりやすくなります。
「最近、歯に物が挟まりやすくなった」「歯が長く見えるようになった」「時々歯がしみる」と感じたらそれは歯ぐき下がりのサインかもしれません。
【「根面う蝕」とは、歯を失うリスクの高いむし歯】
歯ぐき下がりにより露出した歯の根元にできるむし歯を「根面う蝕」と言います。
むし歯は虫歯菌が作り出す酸によって歯が溶けることでできますが、歯の根元は酸に弱いため、虫歯になりやすい部分です。
また、気づきにくく進行も早いために、歯を失うリスクも高いという特徴があります。
つまり、これまできちんとケアしてきた人でも、新たなリスクの発生により今まで守ってきた歯を失いかねないとても厄介なむし歯です。
【「歯の根元」がむし歯になりやすく進行が早い理由】
歯は、硬いエナメル質と、その下の柔らかい象牙質の大きく2つの層にわけられます。
歯ぐきが健康な状態にあって露出している部分(歯冠部)は、エナメル質に覆われています。
エナメル質はほぼカルシウムなどミネラルの結晶でできている、とても硬い組織です。
一方、象牙質はコラーゲンが30%を占めており、コラーゲンの間にミネラルが存在するという構造で、エナメル質と比較すると柔らかい組織です。
本来歯ぐきに埋まっている部分(歯根部)にはエナメル質はなく、歯茎が下がって歯の根元が露出してくると、柔らかい象牙質がむき出しになってしまいます。
この構造の違いにより、象牙質はエナメル質に比べて酸に弱く溶けやすいのが特徴です。
普段の歯垢のPHは中性付近ですが、飲食すると歯垢の中の細菌が糖をエサにして酸を出すことで歯垢の中は酸性に傾きます。
その際、エナメル質が溶け始めるPH(臨界PH)は約5.5であるのに対し象牙質の臨界PHは約6.7なので、飲食により歯垢の中のPHが下がり始めると、象牙質はエナメル質よりも早く(弱い酸で)溶け始めてしまうのです。
【30代以降になると増えてくる「根面う蝕」】
「大人のむし歯」と言われる根面う蝕ですが、では何歳くらいから発症するのでしょうか?
「歯ぐき下がり」は20代でも役4割の人にあるとされています。
そのため30代くらいから根面う蝕ができはじめ、40代では歯ぐき下がりがある人の約20~30%、60代では約半数が根面う蝕にかかっています。
つまり、根面う蝕のリスクは30代から高まり、以降、加齢にともなって増加していくのです。
【根面う蝕の予防方法】
年を重ねるごとにかかるリスクが高まり、気づかないうちに進行していることも多い根面う蝕。
健康な歯を守るためにも、これまでの歯磨きをきちんと見直しましょう。
①軽い力で丁寧にブラッシングする
根面う蝕を発症させない第一のポイントは、歯ぐき下がりを起こさせないことです。
歯ぐき下がりの原因の1つである不適切なブラッシング=力を入れすぎたブラッシング(オーバーブラッシング)に注意しましょう。
また、露出した象牙質に対しても、オーバーブラッシングは禁物です。
適切な力加減は、歯ブラシを歯に当てたときに毛先が広がらない程度の軽い力で磨きます。
1ヵ月しないうちに歯ブラシの毛先が広がってしまう人はオーバーブラッシングの可能性があります。
②フッ素を活用する
〈フッ素配合歯磨き粉を使う〉
フッ素には再石灰化を促進する、歯の質を強化する、歯垢の中の虫歯菌が酸を作り出すのを抑制するなど、虫歯予防に役立つ働きがあります。
もちろん歯冠部のむし歯と同じように、根面う蝕にもフッ素は有効です。
おすすめは高濃度フッ素配合歯磨き粉です。歯磨き粉のパッケージにフッ素配合量(1000PPM超1500PPM以下)が表示されています。
2023年07月12日 11:12