歯茎のできもの
健康な歯茎はきれいなピンク色をしていますが、何らかの理由で白や赤色を帯びたできものが生じることがあります。歯茎のできものといえば、まず口内炎が頭に浮かぶと思いますが、それはもしかしたら「フィステル」かもしれません。フィステルは口内炎よりも厄介なものなので、しっかりとした治療が必要になります。今日はそんな歯茎のできものの正体の、原因や治療法についてお話します。歯茎にできものができたら、まずは位置を確認してみてください。例えば、食事の際に食べ物が当たるような部位に生じたのなら口内炎が疑われますが、歯根の先端付近に生じたニキビのようなできものは、フィステルの可能性が高いです。フィステルとは「サイナスクラフト」、「瘻孔」とも呼ばれるもので、ニキビのように腫れるだけでなく痛みを伴うこともあります。また、たまった膿が小さな穴から排出されているのも、フィステルの特徴的な症状の1つとも言えます。このフィステルは、口内炎とは根本的に異なるものなのでご注意ください。
☆フィステルができる原因
①神経にまで達している虫歯
虫歯がエナメル質から象牙質、さらには歯の神経にまで進行すると、歯髄に感染が起こります。 その結果、歯髄が腐り、汚染物質や細菌が歯根の先端の「根尖孔」という細い穴から漏れ出てフィステルを形成することがあります。
②根管治療後に再び細菌感染した
スペースが残っていたり、感染物質が残っていたりなど、根管治療がきちんと行われていない場合は、歯根部分で再び細菌が繁殖を起こして膿がでるため、フィステルが形成されます。
③精度の低い根管治療
重症化した虫歯では、歯の根の中をきれいにお掃除する根管治療が必要になりますが、その処置の精度が低いと病原体の取り残しが生じ、フィステルを形成する原因となることがあります。 根管というのはとても狭く、暗く、複雑な構造をしているため、勘に頼った治療になりがちです。
④外傷
スポーツをしているときや道端で転んだ拍子に歯を強打した際、後々フィステルが形成されることがあります。 これは、強い衝撃によって歯の神経に炎症が生じた結果です。 一見すると歯はなんの損傷も受けていないのですが、神経と血管で構成されている歯髄には炎症が起こり、なにもせずそのまま放置することで、細菌感染が生じるケースもあります。 そうすると、虫歯を重症化したときと同じようなフィステルを歯茎に形成します。
④歯根破折
歯の根が折れる歯根破折がフィステルの原因になることもあります。 歯根が破折する原因としては外傷がまず挙げられますが、意外に多いのが「不適切な補綴物」です。 特に、太いメタルコアなどを設置した被せ物では歯根にくさび状の圧力が働きやすく、歯根破折のリスクが高まります。 噛む力が強い、歯ぎしり、食いしばりの習慣がある場合も、歯根破折に要注意です。
☆フィステルを放置すると起こる症状
フィステルは歯茎のできものであると同時に、瘻孔と呼ばれる穴でもあるので、溜まった膿は定期的に排出されます。 そのため、一時的に症状が自然と改善するので、放置していると症状がどんどん悪化していきます。 なぜならフィステルの原因は、膿が排出されている部分ではなく、感染した根管やその周囲にあることがほとんどだからです。 つまり、根本的な原因を取り除かずにフィステルを放置すると、痛みや腫れといった症状が強くなるだけでなく、最終的には原因となっている歯の抜歯をせざるを得なくなることがあります。
【フィステル治療法】
歯茎に膿が排出される穴を形成するフィステルは、次のような治療法で改善できます。
①根管治療
歯の神経にまで達した虫歯を治療する方法です。 根管治療をしっかり行えば、歯茎の腫れや炎症、フィステルの症状を改善、あるいは予防をすることも難しくありません。 歯の根の治療を行った後は、土台を作って被せ物を装着します。
②歯根端切除術
歯根端切除術とは、歯の根の方からアプローチしてフィステルの原因となっている細菌や汚染物質を取り除く治療法です。 歯根の先端部分が細菌感染し、膿が溜まっている場合は通常の根管治療では改善できない場合があります。 そのような場合は、歯茎を切開して溜まった膿の摘出と感染歯根を切除する歯根端切除術で症状を改善します。
③抜歯
歯根破折の場合は、状態や症状によって保存できる場合もありますが、ほとんどのケースで抜歯と診断されます。
口内炎くらいで歯医者に行かない、と考える方は多いですが、そのできものが口内炎でなかったとしたら取返しのつかないことになることもあります。 口腔内にできものを見つけたら、できるだけ早めに歯科医院を受診することをおすすめします。